monthly CD Review
Dreamcast用ゲーム「サクラ大戦3」主題歌
(C)2001 SEGA/OVER WORKS/RED 新たなる歌劇への挑戦 人気ゲーム「サクラ大戦」の魅力のひとつは、世界観を大切にしたサウンドと、インパクトの強い歌曲にあります。それらのすべてを取り仕切る人物は、ゲーム音楽の大ベテラン「田中公平」氏。「太正時代」という現存しない時代の音楽を、和風とモダン洋風の折衷によって実現し、サクラ大戦という独特の世界観の構築には欠かせない要素の一つへと昇華させた手腕は、当代を代表するゲーム作曲家に名に相応し功績でした。 今回サクラ大戦シリーズの舞台がフランスは花の都パリ(巴里)へと移ったことで、田中氏の構築した「大正風」という音楽基本路線も大きく変更する必要が生じました。しかし、ただ単にクラシックをベースにするなんて、田中氏の作曲家としてのプライドが許さない。そこで田中氏が新たに着目したのが、ミュージカル音楽でした。元々、サクラ大戦は広井氏の舞台好きから生まれたゲームだったが、日本では馴染みの薄いミュージカル要素はアレンジが必要であり、「日本のミュージカル=宝塚」という図式が生まれたのです。 今回ミュージカルの本場パリを舞台にしたことで、遠慮なく本場のミュージカルをベースに世界観を構築することができたのです。しかも、今まで培った「日本流ミュージカル」と融合させることで、西洋音楽の堅苦しさを感じさせない、深みと威厳を失わない、という両面を実現させる「サクラ大戦3」の音楽基礎が構築されたのです。 「御旗のもとに」 作詞:広井王子 作曲:田中公平 唄:日高のりこ(エリカ)、島津冴子(グリシーヌ)、小桜エツ子(コクリコ)
シンプル&エレガント 今回のオープニング曲「御旗のもとに」は、前作「檄!帝国華撃団」に比べれば、パンチ力に欠ける印象もあります。歌詞も単純だし、間奏の語りも入っていない。地味な印象を持った人も多いのではないだろうか? しかし、これはおそらく意図的にある種の効果を狙ったものであると考えられる。それは「シンプル&エレガント」という西洋音楽の基本姿勢の明示と、現代日本音楽へのアンチテーゼである。 私は、「サクラ大戦3」には隠された裏テーマ「日本文化と欧米文化の相違」があると思う。それぞれに良いところも悪いことろもあり、どちらが正しいとか、どちらが優れているとかいう問題ではない。それを音楽性の上でも違いを明確にしたかったのではないだろうか? 「こういうやりかたもあるんだよ」ということを、ヒットを宿命付けられたシリーズにおいて敢行するのは大きな冒険だったと思う。でも、だからこそ高く評価されるべきなのだ。ゲームから生まれた音楽が、音楽そのものの可能性を拡げる魅力と実力を持っていることを…
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