monthly Game Review
BLOOD THE LAST VAMPIRE
対応機種 : Playstation2
販売/開発 : SCEProduction I.G

「やるドラ」とは?

 「やるドラ」とは、SCEが掲げる『「みるドラマ」から「やるドラマ」へ』をコンセプトにした、アニメとゲームの融合を目指すプロジェクトの名称です。SCEのプロデュース能力とProductionI.Gのデジタルアニメ技術が最強タッグを結成し、Playstationで今までのゲームアニメーションの常識を覆す「ダブルキャスト」「季節を抱きしめて」「サンパギータ」「雪割りの花」の4作品をヒットさせてきました。

 その後、PS2にプラットフォームを移し、「やるドラDVD」第1弾「スキャンダル」を発売。そして、今作「BLOOD THE LAST VAMPIRE」は「やるドラDVD」第2弾にあたります。今回はキャラクター原案に鬼才:寺田克也氏を、企画原案に押井守監督の「押井塾」を起用。新しい血を積極的に取り入れた意欲作。それが「BLOOD〜」なのです。

ストーリー概略

 物語の舞台は西暦2000年、東京。そこには、歴史の影に隠蔽され続けてきた「血〜BLOOD」の存在があった。混沌とした情報社会の中で心を失った現代人。そこに忍び寄る影。ゆがんだ現代社会、荒んだ人間たちの心。その闇に「闇の王」は忍び寄り、深く潜り込む。意思を持った「血〜BLOOD」に隠された謎。鬼を狩る謎の少女「小夜」。主人公は自らの「血〜BLOOD」の誘惑に打ち勝ち、生き残ることができるのか? 意志だけが血塗られた運命を変えられるのだ…

初のシステム進化は成功したのか?

 従来のやるドラシリーズはゲームとしては非常に単純な「分岐選択型アドベンチャーゲーム」でした。しかし、今回初めてこの基本システムに改良が加えられました。「BLOOD Search System」というもので、自発的に隠された選択肢を探し出すというシステムです。

 このシステムは「能動的にゲームに関与する」という意味では非常に面白い試みです。これによって程よい緊張感と攻略の楽しみが増幅されました。しかし、これがゲームの難易度を大幅に上げてしまったのも事実です。過去のやるドラシリーズを制覇してきた強兵であっても、攻略チャートなしでグットエンドに到達するのは至難の業です。完璧な攻略チャートがあっても、Searchのタイミングを間違えるとBADエンド直行。初心者には相当難しいゲームになってしまいました。

これからのやるドラに望む事

 残念なことに、やるドラシリーズの販売本数は回を重ねる毎に減り続けています。根幹となるシステムの進化が遅れたために固定ファンに飽きられてしまったし、デジタルアニメーションが当たり前になってしまったために、もはや絵のクオリティで驚かせることは不可能になってしまいました。今作「BLOOD〜」も上下巻に分けたために価格も高くなってしまい、折角の新規ファン獲得の機会を逸してしまいました。アニメーションゲームの製作には時間も金もかかる。このままではやるドラプロジェクトはジリ貧に追い込まれてしまうだろう。

 「BLOOD〜」はやるドラDVDの今後の可能性を広げようとする意欲作ですが、そのシステム改革は不十分と言わざるを得ません。やるドラは新たなる次元への進化を果たすことで「驚き」を再びユーザーに与えなくてはならない。それができなければプロジェクトの存続意義自体が無意味になってしまう。期待しているからこそ、こんな無理な注文をするのである。ゲームでもアニメでもない、新しいスタンダードを創り出すくらいの冒険をして欲しい。そしてもう一度、私を驚かせて欲しい。それが、このシリーズに夢を求め続けた人間の本音です。