monthly Doujin Review

8cm(はっせんちめーとる)
製作 : 八神健
サークル : 8th GOD's

プロ作家の同人誌

 同人誌というと「アマチュア」というイメージがあるかも知れませんが、実際には多くの現役プロ作家も同人誌活動を行っています。知名度の差があるため発行部数は桁違いですが、「個人創作」の精神においてプロとアマチュアの差はありません。自由な表現と自費出版のやりがいは、商業誌では決して得られない貴重なものです。また、多くのアマチュア作家が同人誌活動によって技術を磨き、名を売り、プロデビューのきっかけを掴んできました。同人誌には、そういう「登竜門」的な一面があることを、是非知っておいて欲しいのです。

8th GOD's とは?

 「漫画家:八神健」…この名を聞いて、すぐに作品名が浮かんでくる人はあまりいないでしょう。かつては週刊少年ジャンプに連載(密リターンズ)を持っていたことある漫画家ですが、その後ヒットに恵まれず、一般漫画界ではすっかり過去の人になってしまいました。八神漫画のファンだった私は、氏の作品が世に出ないことを歎いたものです。

 しかし、八神先生は決して創作活動を辞めたわけではありません。同人誌サークル「8th GOD's」を主催し、独自の創作活動を続けていたのです。商業誌ではできない表現に挑戦することによって、自らの漫画のスタイルを再構築し、来るべき商業誌への復帰に備える… ファンにとって、その再起の道を支援をできることは無常の喜びでした。その後、八神先生は週刊少年チャンピオン誌上で「ななか6/17(じゅうななぶんのろく)」で商業誌復帰を果たしました。ファン冥利に尽きるとは、正にこのことです。

8(えいと)

 プロ漫画家の同人誌の醍醐味は、商業誌では決して読むことの出来ない「レアもの」が読めることにある。それはボツになった原稿であったり、秘蔵の設定資料集であったり、版権を無視した総集編だったり… 今回代表作として紹介させていただいた「8cm(はっせんちめーとる)」は、八神先生の代表作「密リターンズ」の外伝です。悲劇のサブキャラクターにスポットを当てたこの外伝は、あくまで「外伝」であって、「パラレルワールド」ではありません。悲劇は悲劇のままだが、その悲劇は彼女自身が決断したものである。大切な人を守るために、すべてを承知の上で悲劇を受け入れた。その時、悲劇は悲劇ではなくなったのです。

 「自由な創作と、自由な参加」という同人精神… そこにプロもアマチュアもない。作家も読者も一体となって創り上げる表現、それが同人誌なのです。プロの漫画家の同人誌は、ファンにとって最高の道楽です。あなたにもきっと見つかるはずです。感動と愛情を共有できる作品が…